2012/05/21

生贄(いけにえ)の日

今日は900ウン十年ぶりに日本で金環日食が観測されました。
専用グラスを片手に世紀の天体ショーをご覧になった方も多いかと思います。
日本では多いに盛り上がりましたが、これが文明とは無縁の森の奥深くで生きている名も知れぬ部族の人間だったら、まったく違ったことでしょう。

本来、目にまぶしい朝日が差し込む時間帯に、太陽がみるみるうちに黒くなっていき、辺りが薄暗くなっていくのですがら、この世の終わり、人類滅亡の時と思っても不思議ではありません。
何かとてつもなく悪い事が起こるに違いないと、恐怖に身を固め、黒くなっていく太陽を好き好んで見る様なことは決してしないでしょう。
あぁ、これは神がお怒りなのだ!と思って、長老は神に畏怖の念を表すために乙女を生贄として差し出すに違いありません。

上空で大天体ショーが繰り広げられている間、私の頭の中に流れていたのはストラヴィンスキーのバレエ『春の祭典』の不協和音。
ニジンスキー振付『春の祭典』はバレエ・リュスの時代に生まれた問題作。
当時は非難囂々だったそうですが、現代においては世界のバレエカンパニーがニジンスキーの原典版を踊り継ぎ、大切にしている作品です。
チュチュを着たバレリーナが美しく舞う作品ではありませんが、エネルギーが渦巻く重厚な作品で、私は好きです。

マリー・クロード・ピエトラガラが踊る乙女が生贄になるラストシーン。


こんな日は誰かが生贄になってしまうに違いない。
そんな妄想が頭の中をグルグル。。。。
明るいブラインドウの向こうが次第に薄暗くなっていく中、私は愛猫を抱えて布団の中でじっと息を潜めていました。
私の場合、今日のような日は死んだ振りをして、事なきを得るためにおとなしくしている方です。

何かいつもとは違う雰囲気を感じ取ったのか、一緒にいた猫の「熊太郎」は目を開けたままジッとしていました。
見開いた猫の瞳が、今日、私の見た金環日食。
自分が文明人じゃないということを知った朝でした。
前世は生贄の乙女だったのかも。。。